国際線を利用予定なのに「熱がある…」と気づいたとき。
「発熱＝絶対に搭乗できないのか」「体温がギリギリなら乗れるのか」「キャンセルするしかないのか」――そんな不安を感じる人は多いはずです。
本記事では、国際線で熱や風邪症状がある場合の「搭乗可否のルール」「検温や搭乗チェックの現状」「実際に乗れない典型ケース」「医師診断書で認められた例」「もし乗れなかったときの対処方法（航空券の変更・保険など）」をわかりやすく解説します。
安心して旅の判断をするための必読ガイドです。
国際線で熱があると飛行機に乗れない？基本ルールと判断基準
国際線を利用する前に、発熱などの症状があると「本当に乗れるのか」「断られてしまうのか」と不安になる人は少なくありません。ここでは、どのようなルールや判断基準があるのかを整理します。航空会社の約款や国際線特有の安全配慮、さらには感染症対策という観点から、搭乗の可否がどう左右されるのかを明らかにします。
どこにルールがあるか — 航空会社の約款と法的背景
まず、搭乗可否に関する基準は、各航空会社の運送約款や利用条件に定められています。たとえば、JAL（日本航空）では、体調不良や感染症の疑いがある場合、医師の診断書（Medical Information Form）が必要になるケースがあります。
また、健康状態によっては「商業航空による移動に適さない」と判断されることがあり、単なる自己判断では乗れない可能性もある点に注意が必要です。
代表的な搭乗拒否の基準：発熱・咳・倦怠感など
多くの航空会社では、発熱に加えて咳・倦怠感・呼吸困難など、体調不良のサインがある場合、搭乗を断る可能性があるとしています。
たとえ熱が軽度でも、咳やのどの痛み、体のだるさなどがある場合、機内という密閉空間で他の乗客や乗務員への感染リスクが懸念され、安全の観点から拒否されやすくなります。
各国・各航空会社で基準は異なる — 37.5℃／38.0℃などの目安
実際に「何℃以上だと搭乗不可か」は、航空会社や国によって異なり、絶対的な共通基準はありません。多くのケースで「37.5℃以上」が目安とされることが多いですが、国際的なガイドでは「100.4 °F（約38.0℃）以上の熱は搭乗を避けるべき」とする例もあります。
ただし体温だけで判断するわけではなく、咳や倦怠感の有無、渡航先の感染症リスク、航空会社の判断基準など複数の要素によって最終的な可否が決まります。
「感染症の疑いあり」での扱い — 学校保健安全法や運送約款の見地から
あるいは、発熱が単なる風邪ではなく、感染症の疑いを伴っている場合、より厳格に扱われます。たとえば、ANA（全日空）では、感染性の病気、またはその疑いがある乗客については、搭乗を拒否する可能性があると明言しています。
また、類似の国内規制（例えば学校保健安全法での出席停止期間規定）がベンチマークとして参照されることもあり、症状が一定期間収まるまで搭乗を見合わせるよう指示されることもあります。
医師の判断で搭乗可否が変わる例 — 医師診断書（MEDIF など）
ただし、必ずしも「熱がある＝絶対に乗れない」というわけではありません。例えば、体調が安定しており、医師が「搭乗に問題なし」と判断すれば、証明書（Medical Information Form, MEDIF など）を提出することで搭乗を認められる場合があります。
このような医師診断書は、特に呼吸器系や持病などリスクが高い人が飛行機を利用する際によく用いられます。搭乗前にかかりつけ医と相談したうえで、可能かどうかを確認するのが安全です。
なぜ「熱」だけでなく咳・倦怠感なども重視されるのか
体温だけでは、ウイルスや感染症リスクを正確に判断できないからです。たとえば、咳・のどの痛み・呼吸苦などは、飛行機内の乾燥・気圧の変化で悪化しやすく、他の乗客に影響を与える可能性があります。
さらに、機内という密閉空間での長時間移動は、持病のある人や体調不良の人にとって安全上のリスクが高まります。そのため、「熱だけ」ではなく「全体的な体調の良し悪し」が総合的に見られるのです。
どのように熱がバレる？空港での検温・チェック体制
国際線の搭乗手続きでは、発熱の有無が「見逃されずにチェックされる」仕組みが整備されつつあります。チェックインや保安検査、搭乗ゲートなど、複数のタイミングで体温確認や健康状態の確認が行われることがあり、搭乗前の安全管理の一環として発熱・体調不良は見逃せません。
本節では、空港でどのように熱が「バレる」のか、その検温・チェック体制の実態を見ていきます。
空港でのサーモグラフィー・非接触体温測定の導入状況
多くの主要空港では、赤外線カメラ（サーモグラフィー）や非接触体温測定器による体温チェックが導入されています。たとえば、羽田空港や成田国際空港を含む主要ターミナルでは、出発前に搭乗者の体温確認が実施される例があります。
この方式は、スクリーニングとしては迅速・非接触で多数の乗客に対応できるという利点があります。実際、空港の保安検査場入口などを通過する際、乗客の肌表面温度がスキャンされ、一定の閾値を超えると警告が出る仕組みになっています。
ただし、この方法はあくまで一次スクリーニングであり、皮膚表面温度を計測するためコア体温とはズレがある可能性があります。そのため「サーモで通っても安心／通らなくても確定」ではなく、あくまで“疑いあり”として扱われる点に留意すべきです。
保安検査場や搭乗ゲートでの再チェックの可能性
初回の体温チェックに加え、チェックイン後から搭乗までの間に複数のポイントで再度の検温や健康チェックが行われることがあります。特に、保安検査場や搭乗口での再チェックは、出発当日の体調変化にも対応する狙いがあります。
このような多段階チェックにより、「出発時は大丈夫だったが、搭乗直前に熱が上がった」といったケースでも発覚する可能性があります。結果として、発熱や体調不良が見逃されにくくなるという安全側の対応が取られています。
また、空港スタッフは見た目（顔色・咳、倦怠感の様子など）から健康状態に異変を感じた場合、手動で体温測定や質問を求めることもあります。これは単なる温度だけでなく“全体としての体調”を見極めるためです。
入国／出国時の検疫・健康申告の確認体制
国際線では、出国地および渡航先の国・地域の検疫や健康申告が求められる場合があります。特に感染症が懸念される時期や国では、体温だけでなく症状や渡航歴に関する申告がチェックされることもあります。
さらに、到着時の入国審査においても、体調不良や発熱が確認された際は、追加の検査や健康確認が行われる可能性があります。これは乗客全体の安全を守るため、空港と保健当局が連携して行う対応です。
したがって、搭乗前だけでなく、入国・帰国時にも体調状況が問われることがあり、「熱がある人は飛行機に乗れない」「帰国できない」といった事態になる可能性があります。
渡航先の国や時期による検疫強化の影響
渡航先の国やその時期によっては、検疫ルールや健康チェックがより厳しくなる場合があります。たとえば、感染症の流行中や流行が懸念される地域へ向かう国際線では、より厳密な体温チェックや症状申告が義務づけられることがあります。
このような場合、通常よりも搭乗可否の判断が厳格になり、「熱がある」「咳や倦怠感がある」だけで搭乗拒否される可能性が高まります。渡航前には、目的地および経由地の検疫情報を必ず確認しておくことが重要です。
また、国際的な感染症の流行期には、空港側も体調不良者の搭乗を制限する傾向が強くなり、当日の体温や体調だけでなく、渡航先の感染状況が搭乗可否を左右することがあります。
熱がある場合に乗れないと判断される典型ケース
飛行機に乗る前に熱や体調不良があると、どのようなケースで「搭乗できない」と判断されやすいのでしょうか。ここでは、よくある典型的なパターンを挙げ、安全確保や感染予防の観点から、なぜ拒否されるのかを解説します。乗る前にチェックしておきたい“危険信号”です。
体温が基準を超えていた（例：37.5℃以上、または38.0℃以上）
多くの航空会社や空港では、体温チェックの基準として「37.5℃以上」を目安に設定している場合があります。実際、検温でこの水準を超えると、発熱ありとみなされ搭乗を控えるよう案内されることがあります。
また、国際線の場合は渡航先の検疫や機内での安全管理も絡むため、より厳格に扱われる可能性があります。特に38.0℃近くの高熱があると「安全に飛行機を利用する条件を満たさない」と判断される航空会社もあるようです。
したがって、単なる軽い発熱であっても、検温で基準を超えていたら搭乗拒否の対象になりやすいと理解しておく必要があります。
発熱に加えて咳・のどの痛み・倦怠感・呼吸苦がある場合
熱だけでなく、咳やのどの痛み、だるさ、呼吸のしづらさなど、いわゆる風邪や感染症の症状があると、搭乗可否の判断はさらに厳しくなります。こうした症状は、機内という密閉空間で他の乗客や乗務員に影響を与える可能性があるためです。
特に、咳や呼吸苦は「飛行機利用に不安あり」と見なされやすく、搭乗を断られる一因となることが多いようです。
したがって、たとえ熱が軽度であっても、身体の不調が複数重なっている場合は、搭乗前に慎重に判断するべきです。
過去数日以内に感染症と診断された or 疑われた場合
たとえばインフルエンザやウイルス性疾患、その他感染症と診断された、またはその疑いがある場合、多くの航空会社では搭乗不適格と判断されます。
特に、症状発生から一定期間が経過しておらず、感染性のリスクが残っているとみなされる場合、機内という空間での他の乗客への影響を防ぐため、搭乗を拒否される可能性が高くなります。
また、一部の航空会社では、治癒後であっても「解熱してから十分な日数が経過」するまで搭乗を控えるよう運用している事例もあります。
渡航先または帰国先での検疫規定が厳しい国・地域へのフライト
国際線を利用する場合、出発地だけでなく渡航先および帰国先の検疫や健康安全の規定が重要になります。特に、感染症の流行地域や感染症対策が厳しい国では、乗客の体調に関する規定が厳しくなりがちです。
たとえ体温がそれほど高くなかったとしても、渡航先の検疫条件により「搭乗不適格」「入国不可」とされるケースもあるため、事前に渡航先の規定を確認することが重要です。
結果として、「熱があるから乗れない」「乗せてもらえないかもしれない」というリスクは、単なる発熱以上に“渡航先の状況”にも左右されるという点を押さえておきましょう。
熱があっても乗れる可能性は？医師診断書・航空会社の個別判断の実例
熱や体調不良があっても、必ずしも「搭乗不可」とは限りません。医師が「この状態で飛行機に乗っても問題ない」と判断した書面を提出することで、例外的に搭乗が認められる場合があります。本節では、医療診断書の役割や、航空会社ごとの裁量例、状態が軽い場合の判断基準などを紹介します。
医師による「乗っても問題ない」との診断書（MEDIF など）の重要性
多くの航空会社では、病気からの回復直後や持病、最近の治療歴がある場合などに、医師が搭乗適性を判断した証明書（MEDIF = Medical Information Form）の提出を求めています。たとえば、ANA では、症状が安定しており医師が「航空旅行に支障なし」と判断すれば搭乗可能と案内しています。
この診断書には、病名・症状の有無・機内で酸素や医療サポートが必要かどうかなどが記載され、搭乗日を含めて14日以内の発行が一般的な有効条件とされています。
つまり、“ただ熱があった／体調不良だった”だけでは搭乗を諦める前に、まず医師に相談し適切な診断書を取得することで可能性を残せる、という選択肢があるのです。
航空会社ごとの裁量例 — 柔軟な対応がとられたケース
航空会社によっては、病状が安定していて医師の診断書があれば、通常「搭乗不可」とされるような条件でも搭乗を認める柔軟な対応をとることがあります。たとえば、機内での医療機器使用やストレッチャーなどを必要とする乗客も、MEDIF を提出すれば搭乗手続きが可能になるケースがあります。
また、欧米を含む国際線を運航する航空会社の多くが、このような医療証明による個別判断の制度を採用しており、発熱や風邪の回復期、持病の管理下にある乗客でも「問題なし」と判断されれば搭乗可能と案内しています。
ただし、これはあくまで航空会社と医師の判断による例外扱いであり、条件や手続き（提出のタイミング、内容の記載など）を満たす必要があります。
微熱（基準温度未満）＋症状軽微な場合の判断
熱が基準値を少し下回っていたり、咳・だるさなどの症状が軽微だったりする場合、「搭乗不可」とはされず、通常どおり搭乗できるケースもあります。特に体調が安定していて、かつ他に深刻な疾患や感染症の疑いがなければ、問題なく搭乗が認められる可能性があります。
ただし、機内という特殊な環境（気圧の変化、乾燥、長時間の密閉空間など）では、体調のわずかな変化が悪化や他者への影響につながるリスクがあるため、あらかじめ自身の体調や旅程、同行者の有無などを考慮して判断することが求められます。
また、軽微な症状であっても不安があれば、医師に相談し、必要に応じて診断書を取得するのが安全な選択です。
渡航目的・旅程の長さ・機内環境などを踏まえた安全配慮
長距離の国際線や経由便が多い旅程、機内での座席間隔・医療サポートの有無、帰国後の移動手段など、乗客一人ひとりの状況によって「搭乗可能かどうか」の判断は変わります。医師が診断書を発行する際も、これらの条件を踏まえて「飛行機旅行に適するか」を総合的に見て判断します。
例えば、酸素ボンベや医療機器を使う必要がある人、または過去に手術をした人などは、機内での安全確保や緊急時対応の観点から、航空会社が搭乗可否を慎重に判断することがあります。
そのため、微熱や軽い症状でも、「本当に大丈夫か」を自分だけで判断せず、医師と相談し、旅程や体調、リスクを踏まえたうえで搭乗の是非を決めるのが望ましいでしょう。
熱で乗れなかったときの対処法：航空券の変更／払い戻し／保険活用の手順
万が一、発熱などの体調不良で搭乗できなくなった場合でも、あきらめる必要はありません。多くの航空会社は“病気や体調不良”を理由とした航空券の振替や払い戻しに対応しており、また保険の利用で費用を抑える手段もあります。この節では、まずやるべき手順から払い戻し手続き、保険申請の流れまでを整理します。
まずやること：航空会社への連絡と搭乗可否の確認
まず、出発前にできるだけ早く航空会社に連絡し、自身の体調不良を説明したうえで搭乗可能かどうか確認しましょう。多くの航空会社では、病気などで搭乗不能な場合は特別扱いの対象となり得ます。
このとき、医師の診断書など“搭乗できない状態であること”を証明する書類が必要かを確認するのがポイントです。この書類の有無が、後の手続きや払い戻しの可否に大きく影響します。
また、単にキャンセル連絡をするだけでなく、「いつ、どの便を」「なぜ搭乗できないか」を明確に伝えることで、トラブルを防ぎつつスムーズな対応につながりやすくなります。
航空券の振替またはキャンセル申請方法と注意点
航空券の振替やキャンセルを希望する場合、航空会社によっては手数料なしで対応してもらえることがあります。例えば、ある大手では出発予定日から一定期間以内の便へ振替、または医師の証明書を提出で全額払い戻しが可能な特例措置を設けています。
ただしこの制度を利用するには、「出発前」に連絡・手続きすることが前提となる点に注意が必要です。また、診断書の提出期限や払い戻し受付期限など、航空会社ごとのルールに従う必要があります。
さらに、航空券の種類（返金可能かどうか）によって対応が異なるため、購入時の条件も確認しておきましょう。非返金タイプの場合は、保険の活用も検討されます。
医師診断書や証明書を使った保険の申請と請求の流れ
もし体調不良によるキャンセルで医師の診断書を取得した場合、それを根拠に旅行保険の保険金請求が可能な場合が多いです。多くの保険プランでは、搭乗不能や旅行変更をカバーする条件が定められています。
申請方法は、保険会社に診断書と旅行日程、予約内容を添えて提出します。特に、診断書に「搭乗不能であったこと」が明記されていると、承認されやすくなります。
ただし注意点として、保険適用の可否は加入プランの内容や予約時期、旅行開始前の申請タイミングなどによって異なるため、事前に保険証書や約款をよく確認しておきましょう。
旅行保険・航空会社の運賃条件を事前に確認する重要性
旅行前の段階で、自分の航空券が「病気によるキャンセル・変更を認めるプランか」「保険でカバーされるか」をあらかじめ確認しておくことが大切です。条件を理解しておくことで、いざというときにあわてず対応できます。
特に、安価な格安運賃や割引航空券ではキャンセル不可、または条件が厳しいことがあります。こうした場合でも、医師の診断書があれば柔軟に対応してくれるケースがないか、購入時にチェックしておきましょう。
また、旅行保険の補償内容（医療費だけでなくキャンセル補償があるか）も併せて確認し、必要に応じてオプションでカバーしておくと安心です。
まとめ
国際線に乗る際、熱や体調不良があると「乗れるか／乗れないか」の判断は単純ではなく、航空会社の約款や空港・検疫のルール、機内の安全配慮など複数の要素が関わることがわかりました。
たとえば、発熱だけでなく咳・倦怠感・呼吸の乱れなどがあれば搭乗を断られる可能性が高く、多くの場合は搭乗前に体温・健康チェックが行われます。逆に、医師が「搭乗に支障なし」と診断した証明書を準備すれば、例外的に搭乗できるケースもあります。
しかし、その判断はあくまで個別対応であり、「絶対に乗れる／乗れない」は事前にはわかりません。だからこそ、体調に不安があるときは無理せず飛行機を控える、安全と他乗客への配慮を第一に考えるべきです。
もし搭乗できないとなった場合には、航空券の振替・払い戻し、あるいは保険の活用などをあらかじめ理解・準備しておくことで、金銭的・精神的なダメージを最小限に抑えられます。
旅行前には、自分の体調、航空会社・渡航先のルール、そして保険・チケット条件をあらためて確認し、「安全かつ安心できる移動プラン」を選ぶようにしましょう。
